ウェブ食事調査システムの大規模疫学の応用可能性を検討した研究を論文発表しましたので紹介します。
(https://www.jstage.jst.go.jp/article/jea/advpub/0/advpub_JE20220071/_article) 2022年3月ウェブ上に公開)。
料理単位法を用いたウェブ食事調査の大規模疫学研究への応用可能性
Y. Hose, et al. Applicability of a Web-based 24-hour Dietary Recall Tool for Japanese Populations in Large-scale Epidemiological Studies, J Epidemiol. 2022 Online ahead of print.
【食事調査とは】
私たちの食生活は、生活習慣病や様々な病気と深い関わりがあります。食生活と健康の関わりを調べるための疫学研究においては、食事を正しく評価することが重要です。
私たちの普段の食事や食べた量を正確に測定することは簡単ではありません。栄養疫学では、食事調査法として「食品単位」で摂取頻度を回答する食物摂取頻度調査法 (FFQ) という方法が、大規模なコホート研究で用いられています。しかし、日本人の食事は、食品を組み合わせた料理が多いことから、欧米諸国と比べて、測定の誤差が大きいと言われています。
そこで開発されたのが、24時間思い出し法を用いた料理単位ウェブ食事調査システム(AWARDJP)です。
※AWARDJPについてはリンクをチェック
今回は、インターネットを通じた食事調査を日本の大規模な疫学研究で応用することができるかどうかについて、以下3つの観点から検討しました。
1: コホート集団から無作為でどの程度の回答数を集めることができるか(回収率)
2: 回答者が元の集団の特性を反映しているか(対象者特性)
3: 回答のしやすさ
研究デザインは、欧州国際大規模コホート(EPIC study)※を参考にして、回収率8%を
目指して計画しました。
【研究方法の概要】
► 対象者
国内コホート研究の一部(JPHC-NEXTの佐久地域、愛知職域コホート、湯沢コホート、山形コホート研究)の21,537名から無作為、又は地域の悉皆調査から抽出した5,013名のうち、参加に同意した975名を研究対象者としました。
私たちの研究では、インターネットを通じた食事調査を大規模疫学研究で応用することを 最終的な目的としていることから、日本の大規模コホート研究であるJPHC-NEXT Studyと共通の食事調査法 (FFQ) を用いている国内コホート研究の一部を研究の対象としました。
► 調査項目
1. ウェブ24時間思い出し法による食事調査(AWARDJP)
食事調査の回答方法は2つあります。
自己申告:対象者がウェブ上で自ら入力をする方法
調査員による聞き取り:調査員が電話を通して聞き取りをする方法
この研究では、対象者本人に、どちらか一方を選択してもらいました。
2. ウェブ24時間思い出し法の回答しやすさに関するアンケート
1.の入力が完了後、引き続き回答のしやすさに関する5つの項目についてアンケートを実施しました。
食事調査の入力所要時間
入力の簡便性
料理選択の簡便性
入力したい料理が選択肢におおよそ含まれていたか (含まれていなかった場合の入力方法)
食べた量を正確に伝えられたか (入力できたか)
図1.研究の流れ
【研究の主な結果】
私たちの研究の回収率は4.5%でした。(表1)
表1. コホート集団からの回収率および受諾(回答)率
各コホート集団と回答者 (研究対象者) の特性 (年齢、体格、身体活動) は概ね一致して
いました。(図2)
図2. 各コホート集団と回答者の特性の比較
回答しやすさに関するアンケートでは、自己申告の約6割、調査員による聞き取りの
約1割が、食事調査を「やや難しい」又は「難しい」と感じていたことが分かりました。
特に「料理名選択」や「料理詳細入力」と回答した人が多くみられました。
(図3、※右側図は自己申告の結果を抜粋)
図3.回答しやすさに関するアンケート
【この研究結果からわかること】
この結果から、大規模疫学研究においてインターネットを介した食事調査を実施する際、研究参加者を集めることの難しさが分かりました。
一方で、回答者の特性 (年齢、体格、身体活動レベル) を比べると、概ね一致していること
から、対象者が元の集団の特性を反映していることが明らかとなり、募集人数を増やすことにより大規模疫学研究で活用できる可能性が示されました。
回答のしやすさに関するアンケート結果からは、自己申告による回答者が、食事調査を難しいと感じており、特に料理名選択、料理詳細入力の場面を難しいと感じていることが明らかになりました。
インターネットによる食事調査を大規模疫学研究で応用するためには、募集人数を再考する
必要があること、料理名の選択など食品検索画面の改善が必要であることが明らかとなりました。
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